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那須塩原ブランド

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赤松材の経木(島倉産業株式会社) 島倉彰秀さん

熟練の技が、天然材の赤松のよさを最大限に引き上げる

2015/04/13

提供:那須塩原市
天然材の赤松を使って作られる『経木(きょうぎ)』。
食べ物を包むという本来の使い方から、最近ではコースターやしおり、ハガキなど、多彩な用途を見せてくれています。
経木の生産方法や特徴、将来などについて、島倉産業株式会社の島倉彰秀さんにお話を伺ってきました。

松のほんのりとした香りが、素材の風味を引き立てる

「経木」は、天然材の赤松を薄くカンナで削って作られます。赤松は那須塩原市で育ったものを使っていらっしゃるのでしょうか。

「松は県北のものを使っています。“千本松”という地名があることからわかるように、この辺りは赤松の宝庫で、材料が手に入りやすかったですね。
島倉産業は創業60年で、私は2代目の社長です。以前は県内に38件も経木を生産する工場がありましたが、現在では県内に2件のみとなりました」
「経木」は、食品を包む目的で作られたのですか?

「木を薄くしてお経を書いたところから、経木と呼ばれるようになったようです。聖徳太子が食べ物を包んだと言われています。
経木は殺菌・抗菌効果があり、通気性にもすぐれていますので、食品の鮮度を保ちます。また松はスギやヒノキほど匂いが強くなく、ほんのり香る程度。食べ物を包んでも素材の香りを損なうことなく、むしろ素材の風味をひきたてます。
例えば、のりでくるんだおにぎりを温かいうちに経木で包んでも、通気性がいいので、のりがベタベタしません。乾燥もせず、時間が経ってもおいしく食べられます」
では「経木」の作り方を教えてください。

「まず、赤松の芯の部分を切って、このような角材にします。これが経木になる部分です。1本の松で、1万~1万数千枚はできるでしょう。
廃材になる部分もありますので、蒔などにする方には差し上げています」

それで、工場の暖房も蒔ストーブなのですね。

自然の樹木を一定の品質に仕上げる熟練の技

角材を機械にセット
角材を機械にセット
次に、もう50年使っているという機械を見せていただきました。

「角材は、機械で薄く削っていきます。この削る工程を機械化したのは戦後すぐで、高度成長期のピーク時には、全国に800近くの製造元がありました。しかし、この機械が最後に作られたのは昭和50年と言われています。いまでは機械を作れる職人がいなくなり、この機械が壊れてしまったら、経木の生産も終わってしまうのです」

角材を機械にセットして削り始めると、職人さんは削られた経木を手に取り、レバーを少しだけ動かして厚みを調整します。
微妙な厚みの調整は熟練の技
微妙な厚みの調整は熟練の技
「自然の樹木は硬さや柔らかさがさまざまで、機械で同じ刃を使っていても、削る厚さが違ってしまいます。これを職人が熟練の技で調整し、同じ厚さに仕上げていきます。手や音の感覚で、0.15~0.18mmの厚さに削っていくのです。その感覚が備わるまでに30~40年かかると思います」

削った経木は、丸い形の脱水機に1時間かけ、乾燥させます。その後、吊して自然乾燥させたら、人の手で製品に仕上げていきます。
削りたては湿気を含んでしっとり
削りたては湿気を含んでしっとり
「天然の木は必ずねじりなど出てくるので、まっすぐ仕上げるのは難しいですね。木の性質を知っていないとできません。
自然乾燥なので季節によって、乾燥させる日数も違います。おおよそ5~7日でできあがります。仕上げたら、顧客の用途に応じて仕分けし、選別して出荷します」

1日に機械を2台稼働して約5万枚を生産し、月に200~250ケース(1ケース=3000枚)を全国に向けて出荷します。生産者が減ったことで、新たな顧客が生まれるケースもあり、スタッフの5名は大忙し。
現在では家庭で日常的に使う場面は少なくなりましたが、納豆や、和菓子、肉屋、まぐろなどを包むのに使われていることが多いようです。
脱水機にかけた後、自然乾燥
脱水機にかけた後、自然乾燥
手作業で行われる仕上げと梱包
手作業で行われる仕上げと梱包
機械が動く様子を、少しだけ動画に撮ってみました!

「経木を知ってもらうために」さまざまな商品を送り出す

ほんのり松のいい香り。コップの結露は吸収してくれます
ほんのり松のいい香り。コップの結露は吸収してくれます
時代とともに、包むだけではなく、さまざまな使い方をされるようになっていますね。

「揚げ物の油を吸うために、天ぷらの下に敷いてくださっている蕎麦店があります。
また、観光客や若い世代に経木を知ってもらうために、コースターやしおり、ハガキなど、お手軽価格で作っています。書や押し花などは、地元の方にお願いしています。
那須塩原ブランドに認定されたことがきっかけとなり、経木をアレンジした商品を観光協会に置くことになり、個人の方に知っていただけるようになりました」

ハガキは0.7mm、コースターは0.9~1.0mm、名刺は0.6mmと、商品によって厚みを変えています。機械の刃で削った方が表で光沢が出ます。征目(まさめ。年輪が並行な木目)と板目(いため。年輪が並行ではない木目)を使い分けて商品を作るそうです。


経木や関連商品は、塩原もの語り館やアグリパル塩原などで購入できます。
問合せ先や、市内の取扱店一覧はこちらのページでご覧ください。
『赤松材の経木』詳細ページ

島倉さんは、勉強不足の私がどんな質問をしても、優しく丁寧に答えてくださいました。
現在使っている機械が壊れてしまえば生産がストップするわけですが、決して悲観的になることはなく、「今のお客様を大切に」と経木生産に取り組んでいます。
「年輪の具合は外を見えれば大体わかりますよ」と、赤松を知り尽くした職人ならではのお話が印象的でした。
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